
特定口座の株の利益を確定申告すると、ふるさと納税の上限額は増えるのか
源泉徴収ありの特定口座で出た株の利益を確定申告すると、ふるさと納税の上限額は理屈の上では増えます。ただし国民健康保険料が上がる場合があり、必ず得になるとは限りません。
「特定口座(源泉徴収あり)で株の利益が出た年は、確定申告するとふるさと納税の上限額が増える」という話を見かけることがあります。
たしかに、国税庁のタックスアンサーが示す計算式のとおりに読めば、これは正しい方向の話です。
ただし、増えるのは上限額だけではありません。
国民健康保険に加入している人は、同じ「確定申告する」という行為で、保険料の計算対象も同時に広がります。
(2026年9月時点で国税庁・自治体が公表している情報にもとづいて整理しています。個別の税額・保険料は、必ずお住まいの自治体・税務署にご確認ください。)
そもそも「確定申告するかしないか」を選べるのはなぜか
特定口座(源泉徴収あり)の株や投資信託の利益は、証券会社が源泉徴収するため、原則として確定申告をしなくてもよい仕組みになっています。
国税庁の説明によると、特定口座制度は「金融商品取引業者等が年間の損益等を計算するため、簡便な納税申告が可能になる」仕組みです。
源泉徴収を選択した口座では、譲渡益に対して所得税・復興特別所得税と住民税があわせて源泉徴収され、その口座内の譲渡所得は口座ごとに「申告する」か「申告不要とする」かを選ぶことができます。
つまり、確定申告をするかどうかは、証券会社まかせではなく、口座を持つ人が自分で選べる、という点がまず前提になります。
確定申告すると、ふるさと納税の上限額はどう動くのか
ふるさと納税で自己負担が2,000円で済む金額には上限があり、その計算式は所得税分・住民税基本分・住民税特例分の合計で決まります。
国税庁のタックスアンサーでは、この3つの控除の対象となる寄付額の上限が、次のように示されています。
| 控除の区分 | 対象寄付額の上限 |
|---|---|
| 所得税からの控除(寄附金控除) | 総所得金額等の40% |
| 個人住民税・基本分 | 総所得金額等の30% |
| 個人住民税・特例分 | 個人住民税所得割額の20% |
特定口座の株の利益を確定申告すると、その利益が「総所得金額等」に加わり、あわせて個人住民税の「所得割額」も増えます。
上の表の上限はどちらも、この2つの数字を基準にしています。
そのため、株の利益を申告分離課税で確定申告すると、ふるさと納税の上限額を計算するもとになる数字そのものが底上げされ、結果として上限額も増える方向に動きます。
上限が増えても得とは限らない — 国民健康保険料への影響
ここが見落とされやすい点です。
確定申告で「総所得金額等」が増えるのは、ふるさと納税の計算式だけではありません。
国民健康保険料(国民健康保険税)の所得割の算定にも、同じ「総所得金額等」が使われます。
大阪市のコールセンターFAQでは、国民健康保険料の所得割の算定に使う総所得金額等について、「分離課税として申告された株式の譲渡所得や配当所得・土地等の譲渡所得・山林所得等を用いて」計算すると説明されています。
墨田区の説明はさらに具体的です。
源泉徴収を選択した特定口座の上場株式等の譲渡所得等や配当所得等は、確定申告をしない場合は国民健康保険料の算定対象に含まれませんが、確定申告をすると算定対象に含まれ、保険料が増額となることがあるとしています。
また、令和6年度の住民税から、所得税と住民税で申告する・しないの方式をそろえる改正が行われ、確定申告の内容が保険料に反映されやすくなったことも示されています。
つまり、国民健康保険に加入している人が確定申告をすると、ふるさと納税の上限額が増える一方で、保険料も増える可能性があります。
どちらの影響が大きいかは、利益の額や自治体の保険料率によって変わるため、一律には言えません。
会社員(協会けんぽなど)の場合はどうか
会社に勤めていて会社の健康保険に入っている人は、事情が異なります。
全国健康保険協会(協会けんぽ)の説明によると、健康保険料の計算に使う「標準報酬月額」は、基本給や各種手当など「労働の対償として事業所から現金又は現物で支給されるもの」が対象です。
株の譲渡益のような給与以外の所得が、この標準報酬月額の算定に加わるという記載はありません。
このため、会社の健康保険に入っている会社員は、株の利益を確定申告しても、健康保険料が増えるという影響は基本的に受けません。
一方で、扶養に入っている配偶者や家族がいる場合、確定申告によって合計所得金額が増えることで、扶養や配偶者控除の判定に影響する可能性はあります。この点は本記事では未確認とし、扱いません。
| 加入している制度 | 確定申告で保険料に影響するか |
|---|---|
| 国民健康保険 | 影響する場合がある(総所得金額等に算入) |
| 会社の健康保険(協会けんぽ等) | 給与以外の所得は算定対象に含まれない |
結局、確定申告すべきかどうかはどう判断すればよいか
ここまでの内容を整理すると、判断の分かれ目は「自分がどちらの保険制度に入っているか」です。
会社の健康保険に入っている会社員であれば、保険料への影響を気にせず、ふるさと納税の上限額が増える効果だけを受けられる可能性が高い状況です。
国民健康保険に加入している人は、上限額の増加分と保険料の増加分を比べたうえで判断する必要があります。
出典
- No.1155 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)|国税庁
- No.1476 特定口座制度|国税庁
- No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除|国税庁
- 国民健康保険料の所得割の算定に使用する「総所得金額等」について|大阪市総合コールセンター なにわコール
- 国民健康保険料の計算|墨田区公式ホームページ
- 令和8年度保険料率のお知らせ|全国健康保険協会
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